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MeetUp! UXD #05「UX × 行政 〜サービスデザインで変わる行政〜」レポート

XDUnit研究員の小田です。2018年9月18日(火)に、Meetup!UXD #05を開催しました。

予想していた以上に行政のお仕事をされている方が多く参加されていて、突っ込んだ話ができました。行政に明るくない私は一般市民の目線で「UXデザインとして捉えると?」と考えを膨らませながら、興味深くお話を聞かせていただきました。

▼イベント告知ページはこちら
https://peatix.com/event/428343/

ミートアップイベント「MeetUp! UXD」とは?
UX ×【 】をでテーマを設定し、毎回様々な分野のUX実践者とUXデザインについて少人数で語るディスカッションミートアップイベントです。ご参加受付はPeatixで行っています。
https://xdunit.or.jp/service/meetup/

 

行政も企業も悩み事は同じ!?

話題提供いただいた神戸市役所の砂川氏は、大企業から一念発起してのサービスデザイン留学を経て、Code for Japanからフェローとして行政に派遣されている経歴を持っておられます。そのためか、話題提供として頂いたお話はニュートラルで企業人にとっても理解しやすく、実務者が現場で苦労していることは「行政だって企業だって同じじゃないか!」という感想を持ちました。

程度の違いはあるかもしれないけれど、長く続いた組織がサイロ化して局所最適に陥るような話は、大企業でもまったく同じです!新しい取り組みに対して最初は猛反対を受けるのだけど、根気よく続けて成功まで導くと掌を返して「最初から上手くいくと信じていた」「アレオレ案件」と言う人が出てくる…みたいなお話も、別の機会に伺った「企業の新規事業あるある」と重なります。

とは言え、行政と企業では明確な違いもあります。具体的には、営利を求める企業とは異なるため、行政が組織一丸となって目指せるような指標が置きにくい点。それから、市民全体に対する平等が求められるので、特定のターゲットユーザーに絞る企業のようなアプローチが取りにくい点などが挙げられます。

 

UXデザインよりサービスデザイン?

このイベントのタイトルも「サービスデザインで変わる行政」を冠しています。「UXデザイン」と「サービスデザイン」は重心をどちらに置くかの違いで、本質的には同じとも言われています。
参考:https://www.slideshare.net/masaya0730/ss-32131380

今回のミートアップで行政についてのお話を聞いているうちに、経験価値に着眼して経験を創る「UXデザイン」よりも、新しい提供体を全体的・組織的に計画する「サービスデザイン」と呼ぶ方がしっくり来ると感じました。
その心は、市民のUXに注目すると『より良くなるなら国・県・市の「誰が」やるかなんて関係がない』としても、いざ実現するには行政に特有な力学に立ち向かう必要があり、まさに提供体を全体的・組織的にデザインする部分が肝になるからです。

サービスデザインを遂行する上で、行政ならではの苦労はどこにあるか?具体的には、声の大きな人が1人でも批判すると行政としては蔑ろに出来ないので、全方向に配慮するコストがかかって慢性的に手が回らないというお話。何か新しい取り組みで大きなメリットが得られる見込みがあったとしても、批判が出ることを恐れて保守的にならざるを得ないというお話がありました。…いち市民として「役所仕事だなぁ」と感じる事はあるけれど、元を辿れば市民側からの要求に応えるよう試行錯誤した結果であるようにも感じました。

ボトムアップで取り組むには、サイロ型な組織の壁が高くて潰されてしまう。一方で、もしトップダウンで取り組むとしても、市民との接点を持つ現場の影響力が意外と強い。そのような役所論理に対して、サービスデザイン的なアプローチで良くして行けるかもしれない事例もあり、希望が持てそうなお話もありました。

そういえば、今回のレコーディングは芦屋市役所の筒井氏が名乗り出てくださり、私との合作で描きました。いつも会議の板書レベルのところ、イラストを交えて素敵な仕上がりとなりました。この場を借りて感謝します。

 

各ステップに着目して

行政においてどのような取り組みをしているのか?について、UXデザイン(人間中心設計?)の各段階に当てはめて、行政特有で面白いと感じた点を紹介します。

Step.0: 取り組みを計画する

取り組みを行動に移す前の段階で、何の目的でどんな事をするかを関係者間で合意することが必要になります。企業の場合では、上位者に認められればプロジェクトとしてそこそこ動きやすいところ、行政では横の組織まで伝わりにくく「聞いていないぞ」「現状でも回っているじゃないか」「現場の仕事を増やすのか?」という反発に潰されやすいというお話が紹介されました。

根回しの域ではありますが、取り組みについて相談という形式で耳に入れることや、手法として身に付けたワークショップ形式で計画段階から引き込んでしまうことでスムーズに進められたというお話が印象的でした。

Step.1: 市民の利用状況を知る

どのようにして市民の意見を吸い上げるのか?という話題に対して、窓口から挙げられる意見のほか、市民参加型のワークショップ、公募型のインフラ保全事業、企業からの提案プロポーザルといった仕組みが多く紹介されました。Web上で乱立して把握しにくくなっている印象はあるものの、このような取り組みをしていることは素晴らしいことだなと感じました。

  • 府民協働型インフラ保全事業(京都府)
    http://www.pref.kyoto.jp/koubo-kouji/jigyounaiyou.html
  • 公共空間 逆プロポーザル(公共R不動産)
    https://www.realpublicestate.jp/column/4454/

どのような方法で意見を集めても、偏りが避けられない悩みが話されました。例えばWebで情報収集するとWebを使えない人の意見が得られない偏り。批判の声ばかりが届きやすく、お褒めの声が届かない偏りなど。この辺りの問題は、定性・定量を上手く使い分けて解決することが期待されます。

Step.2: 市民の要求を突きとめる

個人的には、要求を突き止めるステップのお話が弱そうに感じています。「要求」というのは「○○が欲しい」と言ったとおりに叶えるだけではなく、潜在的に皆が欲しいと思っている上位要求を探り当てることをも含みます。限りあるリソースを上手く活かすためにも、広く波及するような対策を打つのが有効的にも思えます。しかし、実際のところ手が回っていないこともあれば、言った通りではない事に対して誰が責任を取るのかという問題もあります。

もう一つ、企業のUXデザイン活動であれば「ターゲットを明確にするためペルソナを立てて…」みたいなお話になるところ、行政では「10%の市民の100点を狙う」ことが受け入れられないというお話でした。そんな中でも「優先順位を付けて…」という話法で、自治体の向かうべき方向性に照準を合わせるようなお話もありました。

Step.3: 解決案をつくる

身の周りを少し良くするアイデアであれば、与えられた予算の中でプロトタイプを試してみられるという事例を細かく重ねているお話が興味深かったです。財政面の壁さえ超えると、具現化することで議論が活発になったり、納得感が得られたりする効果があるとのことでした。

民間企業の力を活用することも早期実現には有効だと感じました。ただし、公平性のため公募にかけねばならず、企業がせっかく参画しても受注に至らないと回収できないので、二の足を踏まれてしまう問題もあります。上流から一貫して関われる仕組みも試行されている取り組みの紹介もありました。

Step.4: 評価する

取り組みに対する評価のお話として、「アンケートの回答を指標とする」「デジタルサービスであればWebの指標(クリック数、離脱率)が役立つ」のような話がありました。

一方で、そもそも論として「行政サービスは何を目的にしているのか?」という根本の議題に立ち戻りました。例えば「この街に住みたい」と思わせて「人口を増やす」ことを目的に置いたとすれば、各々の取り組みやWebアクセス数Upは目的へと繋がっているのか?という問いに答えるのは難しいです。

Step.X: 繰り返す

上にあげたStep.1~Step.4を繰り返し回すことが最も大切な哲学で、組織に根付かせて継続的に回らねばなりません。しかし、行政においては担当者の配置替えもあれば、外部登用者には任期もあり、長期的に関われる訳ではありません。

これに対して砂川氏は「旗を立てる」取り組みと表現していました。身の周りの地道な局地戦から、仲間を増やして大きな活動へと波及させてゆくことを狙っておられます。

 

市民の立場に戻って

これまで、どこか行政に対しては「やってもらえる」という感覚を持っていましたが、ミートアップに参加してみて、市民であっても自分の強みを売り込んで行政に関わって仕事にしてゆく仕組み・事例を知り、行政を自分として捉える視点が芽生えました。特に、UXデザイン的な視点では、まだまだ未開拓な余地は多そうです。腕に覚えのあるUXデザイナーのみなさんが名乗り出ることを待っているかもしれません!

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